【終章】 あわいに咲く花

【終章】 あわいに咲く花
①朧羽琴音からの結びの言葉
BGMのない静寂の中で、言葉が溶けていくように〕
長い時間、私の声に耳を傾けてくださり、本当にありがとうございました。
もう、あなたの顔は、昨日までのようにこわばってはいませんね。
背負い続けてきた重い荷物を下ろしたあなたの肩は、本来の華奢(きゃしゃ)で、柔らかな輪郭を取り戻しています。
私たちは、言葉という不完全な器を抱え、見えない断層に阻まれながら、それでも誰かと繋がろうと、不器用にもがき続けています。
そのすれ違いの連続は、時に滑稽で、時に悲しいものかもしれません。
でも、言葉と言葉のあわい、心と心のあわいに生じる、そのわずかな「隙間」にこそ、私たちが人間であることの美しさが宿っているのだと、私は信じています。完璧に伝わらないからこそ、伝わった一瞬の奇跡が、これほどまでに愛おしい。すべてを分かり合えないからこそ、隣にいてくれるだけの沈黙が、これほどまでに温かい。明日からまた、あなたは幾度となく誰かとすれ違い、言葉の限界に直面するでしょう。
でも、もう大丈夫です。
あなたは、そのすれ違いが「自分の罪ではない」ことを、そして、分かり合えないからこそ守られる「静かな聖域」があることを知っているのですから。
もしもまた、世界の理不尽な自己責任論に押し潰されそうになったときは。
いつでもこの、琴音堂へ帰ってきてください。
私はここで、静かな和の情景とともに、いつまでも、あなたを待っています。
あなたの器に注がれた今日という日が、どうか、おだやかな光に包まれますように

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